こんにちは、まーこです。
周りから羨ましがられることが多い双子妊娠ですが、双子妊娠は異常妊娠のひとつです。
実はとてもリスクが高い妊娠です。
双子を妊娠していることが判明して喜ぶのもつかの間、設備が整っている大きな病院に転院したり、双子の種類を特定する検査を受けたりしますが、中でも一気に現実に引き戻されるのが「リスクの説明」です。
私も転院後最初に、「双子妊娠にはリスクがたくさんあるので慎重に経過を見ていきます」と細かく説明を受けました。
我が家の双子はおなかの中でいくつもの病気にかかりましたが、今回はそのひとつ双胎間輸血症候群(TTTS)について解説します。
今双子を妊娠していて不安な日々を送っている人はぜひ読んでみてくださいね。
Contents
双胎間輸血症候群(TTTS)とは
双胎間輸血症候群は簡単に言うと、胎児間の血液バランスが崩れることによって胎児の大きさに差が出たり、場合によっては治療なしでは助からない命の危険を伴う病気です。
一卵性双生児特有の病気
双胎間輸血症候群は一卵性双生児特有の病気です。
一卵性双生児は2人でひとつの胎盤を共有していて、血液がお互いを行ったり来たりしているので発症のリスクがあります。
双胎間輸血症候群は一卵性双生児の中でも一絨毛膜二羊膜(MD双胎)の10%前後にみられます。
そもそも一卵性双生児の妊娠確率が0.3%前後なので高く感じる人もいると思いますが、実際10%という数字は少ないです。
それでも多く感じるのはその重大さを取り扱うサイトやブログた多数あるからではないでしょうか。
血液の病気
双胎間輸血症候群は血液の病気です。
胎児たちは通常、ひとつの胎盤からそれぞれ血液を受け取っています。
胎盤を通る血管はつながっている血管もあるため、何らかの理由でその供給バランスが崩れたときに発症するのがこの双胎間輸血症候群です。
具体的には、血液をもらいすぎる胎児(受血児)と、血液を送り続ける胎児(供血児)に分かれ、受血児はむくみや心不全、供血児は貧血や腎不全を起こします。
引用 日本胎児治療グループ
受血児は過剰に血液をもらうため、血液循環を正常にしようとたくさん排泄する結果羊水過多に、一方供血児は血液を送り出してしまうため発育遅延となります。
また排泄ができないため羊水がどんどん少なくなり、真空パックのようになってしまいます。
この病気の怖いところは、両方が同時に弱るというところです。
周産期(妊娠22週以降)の一児死亡率が60%を超えるといわれていて、一児が亡くなればその作用でもう一児も危ない状況に陥るので早期発見が重要になります。
双胎間輸血症候群の原因
双胎間輸血症候群は昔からあった病気ですが、現在もその原因はわかっていません。
早い段階で発症することもあれば、遅くに発症することもあり、健診時は常に注意が必要です。
双胎間輸血症候群の診断
双胎間輸血症候群の診断基準は以下の通りです。
- 羊水過多(深度8センチ以上)と羊水過少(深度2センチ以下)が同時に見られること。
胎児それぞれの袋の中の羊水量を見るのですが、羊水がどれくらいの量かはわからないため、エコーで黒い部分(羊水)の推定距離を測ります。
- 胎児の膀胱が大きいまたは小さい/見えないこと
エコーでは胎児の臓器や血流を見ることもできます。
胎児はおなかの中でも排泄をしているので、膀胱の状態が診断の目安となります。
その他胎児たちの状態によって検査がありますが、双胎間輸血症候群を診断するときはこの2点を重点的にチェックします。
双胎間輸血症候群の進行
双胎間輸血症候群の進行は、早い場合もあれば遅い場合もあります。
治療方法はありますが、早期発見=助かるというわけではありません。
発症時は自覚症状はありませんし、発見されたときには症状が進行しているといったことも珍しくはないのです。
進行速度はその人によってそれぞれのため些細なことでも、あれ、おかしいな?と思ったらすぐに病院を受診することが必要です。
双胎間輸血症候群の治療
双胎間輸血症候群の治療…進行を止める方法は、3つあります。
うち2つは手術ですが、治療には条件があるのですべての患者が受けられるわけではありません。
実際私たちはどちらの手術も受けず、3つめの出産を選択をしました。
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)
たいじきょうかたいばんふんごうけっかんれーざーぎょうこじゅつと読みます。
難しい名前の手術ですが、おなかに針を刺して器具を挿入します。
つながっている血管をレーザーで凝固して血流を整える手術です。
この手術が可能な期間は原則妊娠16週以上26週未満ですが、羊水深度が10センチ以上ある場合は26・27週も対象です。
また胎児や母体の状態によって条件があります。
この手術を行っている病院は2019年3月現在、国内9か所です。
万が一の場合どの病院に転院するかを考えておくことは、妊婦やその家族にとって安心材料となります。
一卵性双生児が判明したら家族で話し合うようにしましょう!
しかし手術なので、もちろんリスクもあります。
- 手術をしたからといって必ずしも快方に向かうわけではない
- 羊膜の穴が閉じずに破水
- 出血や、傷口から感染症を引き起こす可能性
結果的に胎児死亡や出産に至るなど、あらゆることを考えなければなりません。
羊水穿刺(ようすいせんし)
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(以下、レーザー手術)を受けない場合や受けられない場合…手術可能週数を脱していたり、母子にレーザー手術を受けられない理由がある場合は羊水穿刺という方法があります。
羊水穿刺もレーザー手術と同じく、おなかに針を刺して行います。
増えすぎた羊水を吸引する、羊水除去手術です。
もちろん羊水穿刺にもリスクがあります。
- 針を刺すことによっての子宮収縮→流産や早産ににつながる
- 双胎間輸血症候群を引き起こしている血管がなくなるわけではないので術後も病状は進行する
ほとんどの場合、術後も羊水が増え続けるので再度羊水吸引を行わなければならず、手術のたびにおなかに針を刺す=リスクが高くなることを示しています。
根本的な解決は、出産しかありません。
出産
どちらの手術も最終的な目的は手術によっておなかで過ごす週数を稼ぐことです。
赤ちゃんがおなかの中で過ごす1日は保育器の3日分に相当します。
おなかの外に出れば呼吸や排泄をしなければなりません。
もちろんひとりではできないのでたくさんの機械やチューブをつけます。
それでやっと保てる生命3日分が、母親のおなかではたった1日なのです。
母親のおなかの中ってすごいと思いませんか?
おなかでできるだけ長くいることが、赤ちゃんにとってはとても大切です。
でも。
どんなにおなかに置いておきたくても、赤ちゃんの命に関わる問題が発生すれば別の話です。
双胎間輸血症候群を発症した場合、程度や進行速度を考慮しなければ、根本的な解決は原因の胎盤と胎児を切り離す出産がいちばんの選択肢となります。
日本では妊娠22週未満は流産になりますが、妊娠22週に到達していると早産になります。
早産は胎児の発育が未熟なため、死亡率をはじめとする重篤な障害の可能性も高いのですが、日本の医療は日々進歩しているので生命が維持できる可能性も十分にあります。
しかし早産は、早産が原因で後遺症を残すこともあり、早産になればなるほど後遺症も大きくなります。
双子の場合一児だけが助かる場合もあるため、双胎間輸血症候群を発症した際には手術説明に含めて一児生存率、二児生存率の説明も受けます。
- 進行すると心不全・腎不全を起こしたり胎内死亡の可能性もある
- 早く生まれると早産による死亡リスク・重篤な障害など後遺症が残る可能性がある
双胎間輸血症候群の体験談
ここからは私の体験談になります。
私は妊娠24週で双胎間輸血症候群を発症しました。
双胎間輸血症候群はⅠ期(軽度)~Ⅴ期(胎児死亡)に分かれますが、私はⅠ期でした。
それでも26週で出産しなければならなくなった理由があります。
たまたま双胎間輸血症候群を発症したことで羊水過多になったので、(私の場合の)生存率が一番高いところで出産することになりました
双胎間輸血症候群だと診断された理由
私が双胎間輸血症候群だと診断された理由は、妊娠24週の健診で急激に腹囲が大きくなったからです。
診察室に入ると先生はすぐに、おなかが急に大きくなってるのでじっくり見せてくださいと言いました。
その前の健診は22週でしたが、2週間のうちに双胎間輸血症候群を発症し進行していたのです。
妊娠23週ころから急におなかが大きくなり、皮膚が痛み始めました。
ピリピリして、動くたびに痛いのです。
夫はおかしい、病院に行きなよと言いましたが、双子だからこんなもんだと思っていました。
もちろん双胎間輸血症候群については知っていました。
でも手術は妊娠26週未満なので、今発症してもなんとか出産まで持つだろうと安易な気持ちでいたのです。
ところが24週の健診日エコーで、おそらく双胎間輸血症候群を発症していますねと言われ、翌日転院することになったのです。
翌日、大阪府立母子保健総合医療センターへ転院
翌日は土曜日でしたが、双胎間輸血症候群になると明日の命の保証はないので月曜日は待ちませんとのことでした。
大阪府立母子保健総合医療センターを開けてもらい翌日緊急入院しました。
手術に踏み切れなかった理由
入院時に検査がありましたが、私にはレーザー手術に踏み切れない理由がありました。
実は19週の精密検査で、胎児間にある羊膜が破裂していることが判明しました。
羊膜破裂・破膜はレーザー手術の対象外。
2人はもともとは一絨毛膜二羊膜というMD双胎(画像中)でした。
双胎間輸血症候群はMD双胎に発症する病気なのですが、2人は推定妊娠12週前後で羊膜が破裂し、画像右のMM双胎になりました。
そのころから(MD双胎は胎児の部屋が分かれているのであり得ないけど)どうやらへその緒が絡まっているようだと何度も血流検査を受けましたが確定に至らず。
妊娠19週の胎児スクリーニング検査で羊膜がなくなっていることが確定しました。
その後も2人はずっとくっついているのでもしかしたら最初からMDではなくMMの結合双生児かもしれない、へその緒が絡まって(臍帯巻絡)いつ亡くなってもおかしくないなど先生からはずいぶん酷な説明を受けましたが、羊膜が破裂しても臍帯が絡まっても運よく生き続けた2人です。
2人が同じ袋に入っていると羊水量が図れないので、どちらがどれだけの量排泄しているかはわかりません。
かつ、大きさも一緒、性別も一緒、へその緒が絡まったまま羊水過多でおなかの中をくるくる移動しているのでどちらがどちらかさえ、エコーでは判別できなかったのです。
それでも確実に増えている羊水をどうすべきか、悩みました。
羊水穿刺も考えましたが、吸引してもまた羊水が増えるのでリスクがあることと、
万が一大阪で出産となれば一時的に大阪に住まなければならなくなるので断念しました。
ちなみに双子の羊膜破裂はとても珍しいそうです。
なので先生自身も何度も検査を重ね、何人ものエコー専門医も頭を悩ませました。
もちろん羊膜破裂や羊膜穿破という事象はあるけど、双子の羊膜が破裂する経験はないと言っていました。
手術ができなくなる26週を待って地元に逆搬送
大阪では双胎間輸血症候群の急激な進行による対応のため入院し、手術ができなくなる26週を待って地元に戻る決断をしました。
地元の総合病院では羊水除去手術も対応してくれるので、安心して戻りました。
グラムではなく週数が大事
地元の病院に戻ってすぐに説明がありました。
双胎間輸血症候群が急進行した場合、明日の胎児たちの命の保証はありません。
もちろん様々なリスクはありますが出産を希望するのか、羊水除去手術を希望するのかの方向性を聞かせてほしいといわれ、私たち夫婦は出産を選択しました。
赤ちゃんは生まれた大きさよりも、週数が大事です。
小さく生まれても、在胎週数で内臓などの発育が異なるため、その日からは週数を稼ぐことが目的になりました。
とはいってもその日の推定体重は1000gあるかないかでした。
いつ生まれてもいいように胎児の肺を成長させるステロイド剤を打ち、毎日胎児たちの心拍を確認することに。
それでも4日後に生まれてしまいました。
羊水が増え続け、私のおなかが持たなくなったためです。
羊水が多すぎることで胎児心拍が確認できにくくなったこともあり、元気なうちに出してあげましょうとのことで帝王切開が決まりました。
妊娠26週出産での一児生存率は90%、二児生存率は70%台という中、出産に踏み切りました。
写真は生後1か月の姉。
850gで生まれて、まだ1000g超えていません。
挿管されていて、生まれてからまだ一度も声を出したことがありません。
もちろんミルクもチューブです。
出産になった原因は6つ。
- 臍帯卵膜付着(姉)
- 臍帯辺縁付着(妹)
この2つはへその緒の位置がずれているので、栄養不良で胎児が育たなかったり死亡するリスクがあります。
- 臍帯巻絡
2人分のへその緒がぐるぐる巻きついて、いつ血流が途絶えるかわからない状態です。
- 羊水過多
- 双胎間輸血症候群
いつ進行速度が速くなるかなどわかりません。
常にリスクがつきまとう危険な状態です。
- 羊膜破裂
羊膜破裂そのものは出産に影響しませんが、早期破裂した場合、羊膜が胎児に絡みついて成長中の胎児の指や手足を切断してしまうという事例があります。
双胎間輸血症候群になってもならなくても、へその緒の位置が胎盤の隅っこだったのでそもそも栄養がいきわたっていなかったこと、へその緒が絡まっていつ亡くなってもおかしくなかったことのほうが、大きかったような気がします。
安全な出産はありませんが、私の場合いろいろなリスクがありすぎたので、週数を稼ぎながら異変があったらすぐに出産するという措置が取られました。
母子集中治療室に入った4日後、緊急帝王切開で出産しました。
医師の素早い判断と連携が必須
生まれた後は最新の医療技術と、あとは2人の生命力次第です。
しかしそこに至るまでにはたくさんの医師やスタッフの速やかな診断、病院間の連携があります。
もし羊膜破裂に気づかなかったら、2人はおなかで亡くなっていたかもしれません。
もし双胎間輸血症候群を早期発見できなかったら、2人はおなかで亡くなっていたかもしれません。
もし羊水除去手術をしていたら、また状況は変わっていたかもしれません。
それは良いほうに変わっていたかもしれないし、悪いほうに変わっていたかもしれません。
たらればはありませんが…私たちは素人なので、どうすることもできません。
無事に生まれた今だからこそ、言えることもあります。
とはいえ、2人は後遺症を残すことになりましたが、私は自分が納得できる選択をできたと思っています。
今、双胎間輸血症候群だと診断されて絶望に駆られている人がいるかもしれません。
双胎間輸血症候群に怯えている人がいるかもしれません。
毎日不安だと思います。
毎日生きた心地がしないと思います。
それでも、母親はおなかで子供たちを育てなければなりません。
私も随分と絶望を感じながら出産に至りました。
だけど双胎間輸血症候群と診断されたからって必要以上に不安にならないで、自分に責任を感じないでくださいね。
MD双胎を妊娠していたら誰でもリスクがあります。
私が感じたことは順調だからといって油断しないということでした。
本当にあっという間に発症、進行します。
適切な処置をすることによって胎児死亡率は下がります。
我が家の双子のように、無事に生まれてくる可能性だって少なくはありません!
もしおなかの異変に気づいたら、すぐに病院を受診してくださいね。